今年も輪島漆芸美術館で、漆工芸を学んだ全国の大学生の卒業・修了作品展、
「漆芸の未来を拓く-生新の時 2012-」が開催されています。(6/24まで)
例年通り、学生時代ならではの想いのこもった作品が並び、
見ているこちらも瑞々しい気分になってきます。気になった作品をいくつか。

会場に入ってまず目を惹いたのが、富山大・新谷仁美さんの「繭の箱 蚕の箱」
黒いメッシュの箱、その中と上に大きな白い蚕蛾がいます。
独特な雰囲気と存在感があって、オブジェとしてなかなか魅力的です。
でもこのメッシュの箱はどうやって作ったのかな?
あれこれ考えてみましたが、いずれにしろ
塗りや研ぎの作業には相当な手間がかかってそうな力作です。

金沢美大・長谷川悠希さんの動物の形をした杯 <microcosm> は、
どれも上手いですね〜。造形もユーモアがあって巧みで、
軽やかなセンスを感じます。作者のコメントにもあるとおり、
「ほんの少しだけ日常を鮮やかにしてくれる」漆の多様な表現をうまく生かした、
愛すべき小品、といった感じでしょうか。
見ていて楽しく、コレクションしたくなる器です。

京都市芸大の入澤あずささん「遥かなる音色」
オウム貝と黒漆を組み合わせたシンプルな作品なのですが、
素材そのものが持っている輝きを最大限に引き出して、
相性の良いこの2つの相乗効果を生かした非常に美しい作品に仕上げています。
滑らかな乾漆のフォルムもオウム貝と見事にマッチしていて、
細部まで気を遣った繊細で丁寧な仕事の跡がはっきりと感じられます。

これら以外にも、若者らしいアイディアに満ちた魅力的な作品がたくさん。
完成度はともかく、思い切りパワーをつぎ込んだ多くの作品の熱気にあてられて、
こっちも何だかやる気が出てきました。

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工芸・アート・デザイン | コメント(2) | トラックバック(0)
コメント
No title
こんばんは。この記事を読んでから、もう会期が終わってしまうなと思い、先週やっと鑑賞してきました。遅ればせながら少しコメントさせていただきます。ぱっと見、第一印象は昨年以上に大作が多いなと思いました。制作期間や費用も相当なものでしょうね。で、私が今回の展示で一番気に入ったものは、実は大作ではなくて谷口悠さんの「Mitsuko」。この作品の素っ気ない程のクールな佇まいは工芸と言うよりアートの分野でよりその魅力が理解されるのではと感じました。正直この技法を真似たいと思ったくらいで、そのノウハウが聞きたい。また、たった1点のみの出品なので地味な印象は免れないですが、これが小さなサイズであっても多数の展示であれば、もっとインパクトのあるものになった気がします。今野要さんの作品は対照的に大きく、実用的かつ可愛い素敵な家具。このままでも充分魅力的ですが、外枠・足の部分に塗りやオーガニックなデザインが加味されていれば、より一体感が出たかも。松本有貴さんの作品も写真ではその魅力が伝わり難いですが、渋い色彩が心地良く趣味の良さを感じます。自分が使うなら器としてでは無く、美術館の壁に掛けられていたようにオブジェとして鑑賞したいですね。また最近は工芸分野でも人体をモチーフとしたものが多いですが、越知聡未さんの作品は個性があって面白いですね。色を使わないことで強さが出てると思います。その他の作品も力作揃いで、正直フツウの工芸美術展より数倍は面白かったです。この展覧会に出品された方々の中から何人がプロとして活動されていくのか気になりますが、皆さんの今後の活躍を期待してます。
Re: No title
北さん、コメントありがとうございます。
谷口さんの「Mitsuko」は私も気になっていて、これを応用して何か面白いものを作れないかなと考えてました。何年か前の 国際漆展 でも写真を使った作品がありましたね。越智さんのおばあちゃんの像は、作者のパーソナルな気持ちがあの抑えた質感にうまく表現されているようで、私も印象深かったです。
この展覧会に限らず、卒業制作展は作者の一世一代の気合が自分の若かった頃の気分を思い起こさせてくれるようで、ほんと見ていると何だか気持ちが熱くなってきますね。今はすっかりのほほんと日常を過ごしてしまっておりますが…。

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