「日々是修行」佐々木閑

2012/03/06 Tue 20:57

もう何年も前ですが、新聞のある連載コラムの一文がふと目に留まりました。
仏教を作った釈迦の根本的な考えが説明されていたのですが、
そこには大体次のようなことが書かれていました。
「この世には私たちを救ってくれる超越的な力を持つ絶対者などいない。
この世界はすべて因果の法則で動いている。だから、苦しみを消すためには
絶対者にお願いするのではなく、まず苦を生み出す法則を正しく知り、
自分の心を鍛錬して苦を消していく、それが唯一の道だ。…」
これを読んだとき、何だか目の前がすーっと開けたような爽快感を覚えました。

現在の日本の仏教も含めて、キリスト教やイスラム教その他、
宗教というものは大体絶対的な力を持つ神や仏というものを想定し、
その超越者を信じて従うことで救われる、というものですが、
釈迦は、この世には神などいない、というところから
仏教を作っていった、ということがとても新鮮な驚きでした。
日本に伝わった仏教は大乗仏教なのでこのような初期仏教とはだいぶ様相が異なり、
阿弥陀如来とか薬師如来とかとにかくたくさんの仏様がいて、
その絶対者・超越者である仏様を信仰することで
救いを求める、といった救済の宗教に変質しています。
私は大乗仏教の思想にも深遠さを感じて惹かれるのですが、
初期仏教の徹底した合理精神で世界を理解しようという態度が、
現代社会を生きる私たちにはよりしっくりくるような気もします。

日々是修行

コラムの著者は花園大学教授の佐々木閑さん。
この「日々是修行」は、その連載コラムを1冊にまとめたものです。
全部で100話あり、修行の方法から、なぜ仏教は多様化したか、など
その他様々な話題がわかりやすく手短にまとめられていて、
読んでいてなるほどと思うところがとても多い本です。
随所に著者の体験からにじみ出た他者への暖かい眼差しや、
著者自身の人生の喜びや希望も感じられ、
好きなところを拾い読みしてみるだけでも何だか元気づけられます。

佐々木閑さんは理系出身の仏教学者で、
現代に通じる初期仏教の合理精神について
いろいろな著書で繰り返し説いておられます。
2006年に出版された「犀の角たち」は、
初期仏教と自然科学の共通点、親和性というテーマで書かれていますが、
コンパクトでわかりやすい科学史+初期仏教史としても読めるし、
パラダイムシフトのことなど科学の見方についても
教えられることの多い、とても刺激的な本でした。
佐々木さんの書いておられる分野は個人的にとても興味のあるところなので、
他の本もいろいろ読んでみたいですね。

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コメント
No title
 佐々木さんはEテレの100分de名著に出演されてた方ですね。初期仏教は仏の宗教と言うより仏陀の教えですかね。霊的、儀式的なものが無いので分かりやすいんですが実行(修行)するとなると凡人には難しいです。 
 尚、先日のコメントの件ですが、そちらの筋にもDubにも詳しくはないです。又機会があったらコメントさせてもらいます。南無阿弥Dub




えすぺらんささん、コメントありがとうございます。あーそうでしたか。1回目は見逃しました。次回から見てみます。
そうですね、基本的に出家を前提とした修行ですからね...。凡人には親鸞のような他力でいくしかないですかね。あれはあれでまた面白いですけど。
またいろいろとコメントお願いします。

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