America_Today

"ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥディ"
by カーティス・メイフィールド



今出ているミュージックマガジン9月号は山下達郎特集です。
達郎さんのインタビューの一節に、次のような言葉がありました。
とても興味深く面白かったので、ちょっと長いですが一部抜粋して引用します。

「音楽っていうのはそれほど強力な精神メディアじゃないんですよ。
非常に脆弱なメディアでね。…
音楽って、精神的にはもちろん、肉体的にもある程度平穏な状態で
集中力を保てる状態じゃないと機能しない。…
僕の中には本当にダウンした時に音楽ってどれくらい
必要かって問いかけがいつもあって。
本当に煮詰まったときに聴けるアルバムって、
一体人間、人生で何枚あるか、という。
僕にはたった1枚しかないな。
それはカーティス・メイフィールドの
『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥディ』
これ1枚。本当に煮詰まったらいつもこれを聴く。
このアルバムのみが僕を救ってくれる。」

あー、そうなんだ…。
博覧強記で知られる達郎さんが、
それほどまでにこのアルバムを大切にしていたとは…。
というわけで思わずこのアルバムをCD棚から引っ張りだして、
集中してじっくり聴き込んでみました。

この "There's No Place Like America Today" 、
カーティス・メイフィールドが'70年にソロになってからの作品では
私もやはりこのアルバムが一番好きで、最高傑作だと思ってます。
演奏は極端に音数が少なく、最初から最後まで異常に張りつめた緊張感。
ジャケットも含めて強烈なメッセージ、荘厳な祈りを込めた曲が並びます。
その中にあって唯一3曲目の "So In Love" は
まさに珠玉の、という形容詞がこれほど似合う曲もないくらい美しいラブソングです。
このゆったりしたホーンのリフ、この感じが私的にはツボ。
ゆったり身を委ねると、たまらん幸福感を感じさせてくれます。

カーティスはものすごく好きでずっと愛聴しているのですが、
どちらかというとソロになってからよりも
'60年代のインプレッションズ時代が更に好きで、この時代の作品は
何と言うか、私にとってはソウルの原風景、とでも言えばいいのか?
まあ他にもサザン・ソウルとかいろいろジャンルもあるけど、
少なくともノーザン・ソウルの原風景のような感じがします。
とにかく私にとってはど真ん中ストライク、基本中の基本のような存在ですね。

さて、この "There's No Place Like America Today" 、
達郎さんが本当に煮詰まったときに聴ける唯一のアルバムということで、
自分にもそんなアルバムがあるかなあ、といろいろ考えてみました。
でも、何だろうなあ...、今のところあまり思いつかないですね。
軽く落ち込んだくらいのときなら、
確かにいろいろ聴いて気分を変えたりしていたと思いますが、
過去本当に落ち込んだとき、たとえば身内が死んだときとかのことを思い出すと、
普段は大好きな音楽でさえ、達郎さんも語っていたとおり
まるで聴く気にならなかったのをはっきり記憶しています。
ひょっとしたら気づいてないだけで1枚くらいはあるかもしれないんで、
今度ほんとに落ち込んだときにいろいろ聴いて試してみようかな。
まあそんな状況にあまりなりたくないけど。

で、達郎さんはこのアルバムのどんなところに救われてるんだろう?
確かにこのアルバムには苦しみや嘆き、怒りの歌が多いけれども、
じっくり聴くとその中にも「救い」を感じる要素はあるし、
音が能動的に、ダイレクトにこちらの中に入ってくるというよりは、
優しく静かにじわじわとしみ込んでくるような凄みが感じられます。
他人の個人的な感情についていちいち聞くのはとても野暮なことだとは思いつつも、
音楽職人の達郎さんがどんな感じで聴いているのか、ちょっと知りたいですね。

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