家守綺譚_冬虫夏草_梨木香歩

4月に新作の「海うそ」が出たばかりの梨木香歩さん。
「海うそ」はまだ読んでないですが、
今年に入ってから梨木さんの小説を続けて何冊か読んでます。

読んだ中で今のところ一番惹かれているのが、
「家守綺譚」とその続編の「冬虫夏草」
今から"ほんの100年少し前"の琵琶湖近くの疏水や鈴鹿山中を舞台に、
「新米精神労働者」(←この言い方も面白い)の綿貫征四郎が、
「天地自然の気(=龍やら鬼やら河童やら..)」の織りなす豊かな世界と交わる物語。
梨木さんの確かな筆力と深い背景知識で味わい深く綴られていて、
自分もこの中に入って散歩でもしてみたい気分になってくるね。

梨木さんの他の本でもそうだけど、幽霊やもののけ、
この世のものでない者たちが、当たり前のように現れては去っていく。
みんな世の摂理を芯から理解して、どこか達観したような雰囲気を漂わせ..。
でもこの自然界はあるがままにあるようでいて、実は私たちの知らないところで、
もう一つ別の何か大きな意志が、結構骨を折りながら一生懸命動かしているらしい..。

この世に生きる人間たちも、彼らの存在や出現にさして驚くような様子もなく、
つかず離れず、ごく当たり前にそれを受け入れている。
この世とあの世の境が曖昧模糊として溶け合っている世界。
そんな生活の中にある、ある種のしあわせ感、のようなもの。
今では失われてしまった、そしてこれからももっと失われていきそうな予感のする、
この満ち足りた、幸福な感じ。ここに描かれている世界は、なんて豊かなんだろうか..。
(でも「冬虫夏草」で主人公が歩くこの美しい村々が、
後にダムの底に沈んでしまうこともさりげなく語られてますね。)

それにしてもどこかにこんな天地の気に満ちた美しい場所があったら、
そこでゴローみたいな愛犬と一緒に独り静かに暮らしてみたいもんだな~、と、
読みながらも本を置いてしばらく夢想してしまうこともしばしば。

ところでこの2編は各章がすべて植物の名前になっていて、
知らない植物は画像をググりながら読むのも楽しいです。
次はこの2編でも少し語られている、綿貫の友人のトルコでの留学生活を綴った
「村田エフェンディ滞土録」を読もうと思ってるところ。

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