「羆嵐」吉村昭

2013/07/06 Sat 19:28

羆嵐

大正4年、北海道で起きた日本史上最大の獣害事件といわれている、三毛別羆事件(さんけべつひぐまじけん)を描いたノンフィクション小説。巨大なヒグマが開拓民の集落を襲い、わずか2日間に胎児も含め7人が命を落としたという事件です。
何度かドラマ化もされ、私は見てないですがしばらく前にフジテレビのアンビリバボーでもやってたそうなんで、ご存知の方も多いかもしれません。Wikipediaにもかなり詳細にこの事件のことが記述されていて、最初に知ったときは日本でこんな悲惨な事件があったんだな~、と結構戦慄を覚えました。
北海道の開拓民の辛苦はいろいろと耳にしてきましたが、こんな苦労もあったんですね。

この小説では吉村さんは若干の脚色も交えつつ、なす術なく圧倒的な力に翻弄される村民たちの恐怖と動揺、悲しみや絶望を、まるで彼らと一緒に行動しているかのように詳細に、かつ淡々と抑えた筆致で綴っています。
ヒグマは火を恐れない、人間の女に異常な執着を示す、一度得た獲物は自分のもので、取り返したりすると非常な執念深さでまた取り返しにくる、といった習性も語られています。

警察は200人以上の討伐隊を組織しましたが、数の力は大して役に立ず右往左往するばかり。そこに静かに登場するのが、荒くれ者で村民に忌み嫌われているが熊撃ちの名人で、ヒグマを知り尽くした一人の老練な猟師。最後は冷静沈着な彼の放った弾丸によって決着がつけられる、という結末は、事実ながら非常にドラマチックで、ぐいぐい引き込まれます。
大勢の力を合わせれば何とかなる、という集団の力を信じたいところなんですが、結局それではどうにもならずたった一人のエキスパートが解決する、という展開にはいろいろ考えさせられました。こういうことは、人間の社会のある局面においては真実なのかもしれません。

いろいろ調べてみたら北海道ではこの事件以外にも、札幌丘珠事件、石狩沼田幌新事件、福岡大ワンゲル同好会事件など、過去たびたびヒグマによる大きな死亡事故がありました。そういえばあの星野道夫さんもカムチャツカでヒグマに襲われて命を落としましたし、昨年は秋田の熊牧場でも痛ましい事故がありました。本州のツキノワグマなら、投げ飛ばして撃退した、なんていう話もたまに聞きますけど、ヒグマに出会ったらまず死を覚悟しないといけないんでしょうかね..。ツキノワグマでも襲われて亡くなった人も大勢いるし、十分危険ですが。
現代人の多くは文明社会の中で普段は何不自由なく、不安を感じることもなく生きていますが、結局自然の中に生身で放り出されたらかなり下位の、無力な存在なんでしょうね。

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コメント
No title
昨晩、この記事を読んでWikiへも寄ってみたんですが、あまりにエグくて寝付きが悪かったです。この事件、自分が小学校の頃に映画か何かを見せられた覚えがあるんですが、ウィキには記述が無かったです。とにかく怪談なぞ笑い話に感じるほどにリアルに怖い話ですね。
Re: No title
北さん、コメントありがとうございます。
私も初めてWikiを読んだときは衝撃でした。映画もあったんですか。見てみたいような、見たくないような..。事件現場にはヒグマの模型が置かれていますが、本当にあんなに大きかったんでしょうか?にわかには信じられない大きさですが、あんなのが襲ってきたら確かにどうしようもないですね。熊はくまモンとかテディベアとかプーさんとか可愛いキャラにもたくさんなってますが、この落差を考えるとキャラクターとかシンボルっていうのも面白いものですね。

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