能面の面裏

2017/04/03 Mon 17:37

先日WEBで見かけた能面の面裏の写真、見た瞬間にドキッとして強烈な印象。
写真家の渡邉博史さんの能面を撮ったシリーズの一つです。

Hiroshi Watanabe Shunkan

能にも能面にも全く詳しくないけど、考えてみると能楽師の方が直接向き合っているのはこの面裏になるわけで、この裏面の造形にも機能的なこと以外に、演者の心に影響を与えるような深い意味が込められているんだろうなあ、と。

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トーマス・ルフ展

2017/03/18 Sat 14:59

3/12に終了しましたが、金沢21世紀美術館でのトーマス・ルフ展を見に行ってきました。

トーマス・ルフは一応写真家というくくりの方ですが、今回の展覧会を見ると、もはや写真という枠を遥かに飛び越えていて、「写真表現をベースにした、コンセプチュアル・ビジュアル・アーティスト」とでも言えばいいのか?(テキトーですがw) とにかく多彩なアイディアと表現にあふれた刺激的な展覧会でした。

展覧会は、過去から現在に至るまでルフさんが取り組んできた18のシリーズで構成されています。中には、予備知識なしだとルフさんがこの作品群で一体何をしようとしているのか、写真を見ただけではなかなか理解するのが難しいシリーズもあります。私は普段は展覧会へ行っても説明文をそれほど読まない方なんですが、今回は各シリーズごとの説明パネルがかなり役に立ちました。(笑) 1枚の写真またはその集合、その背景にこれほどの深い思考や洞察が存在しているのか、という事実にまずは心を動かされます。

Thomas Ruff
友人たちを撮った巨大な「ポートレイト」シリーズ
これだけ巨大に引き伸ばされると、もはやポートレイトではない別のものになってる感じ。

Thomas Ruff_lmvdr_other portraits
こちらは「アザー・ポートレイト」から。
犯罪捜査のためにかつて警察で使われていたモンタージュ写真合成機を使って制作された、この世には存在しない人のポートレイト。骨格と目鼻の位置に違和感がある人もいたりしてて、何だか幽霊のように儚げに見えてくる。

Thomas Ruff_lmvdr_nights
湾岸戦争のときの暗視カメラによるミサイル攻撃の映像に触発されたという「夜」シリーズから。緑色の画像は美しいけど、穴から異界をのぞいているようでちょっと怖い、怖いけどどこか詩情のある不思議な感覚。


シリーズの中でビジュアル的に最も惹かれたのが、「l.m.v.d.r.」と「ヌード」でした。
「l.m.v.d.r.」はミース・ファン・デル・ローエの建築を撮ったシリーズですが、デジタル加工された画像が非常にスタイリッシュに感じられ、鮮烈な印象を受けました。ミースは近代建築の先駆者なので、その建築を今現在の目から見ると逆に普通というか至って当たり前の建築に見えるんですが、ルフさんの画像で見ると新たな命を与えられて現代に蘇ったよう。

Thomas Ruff
Thomas Ruff
Thomas Ruff
「l.m.v.d.r.」シリーズ

Thomas Ruff_nudes
こちらは「ヌード」シリーズより。この作品集をお持ちのKさんの話によると、あまり過激なのは今回来てなかったみたいです。(笑)

Thomas Ruff
「jpeg」シリーズ。これが一番わかりやすいといえばわかりやすいか?


もう一つ印象的だったのは、「Press++」と「ニュースペーパーフォト」
この2つのシリーズは制作年代は全く違ってますが、2つで対になっているように感じられました。どちらも報道写真を題材にしてそれぞれ全く逆のアプローチで作品化したもので、「Press++」は写真にその当時のメモ書きなどの文字情報を合成した作品、「ニュースペーパーフォト」は逆にキャプションを取り除いて画像のみを提示したもの。これら2つの作品群が円形の同じ部屋に展示されていて、これらを眺めている自分は1枚1枚の画像から一体何の情報や意味を受け取っているんだろう?..と考えてしまいました。画像が元々持っていた意味や情報、それをどう伝達して人がどう受け取るのか、どう変質していくのか、という根本的な部分を問われているんでしょうか?どうもうまく言葉にできませんが、眺めているうちに何だか頭が混乱してきて面白かったです。(笑)

Thomas Ruff
「Press++」シリーズ

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福田尚代さんの回文と美術

2017/01/19 Thu 17:30

最近、福田尚代さんという美術家がとても気になってます。
昨年11月に出版された「ひかり埃のきみ」という作品集には、美術の他に福田さんが取り組んでいる回文も収録されているそうなんですが、新聞やネット記事にいくつか載っていたのを紹介すると、

「仮名の実 詩の石 またたく芥 たましいの染みの中」

「遠く闇の音 星の下 私の死 骨のみ焼く音」

「抱いていた卵 対だったがしぼみ 星がたった一個またたいていた」


..うーん、素晴らしい。回文であるという制約を軽やかに(実際は大変な苦労をされてるんでしょうけど)、鮮やかに打ち破って、想像力を強烈に刺激されるイメージ豊かな言葉として美しく結実させていて、わ~凄いな~、とつくづく感心してしまいました。長いものでは300字を超えるものもあるそうで、一体どうすればそんなものが作れるんだろう?と..。

ちょっと調べてみたら、何と金沢の山鬼文庫で昨年11月21日まで福田さんの個展が開かれていたそうで、あちゃ~もっと早く知ってたら見に行ったのにな~、と今非常に悔しい思いをしています。

実際の展示は見ていないので確かなことは言えませんが、Webで見た福田さんの作品は、本や原稿用紙、消しゴムなどの素材を繊細に加工して構成した、工芸的で、なんだか静かに独りごとを言っているみたいな、まさに見る詩のような印象。

原稿用紙をくり抜いた作品は、昨年21世紀美術館の「コレクション展2|ダイアリー」で見てその中で一番気に入った、セシル・アンドリュの「定時課」(本の文字を白く塗りつぶした作品)と似ているな~、とも思いました。と思っていたら、やはりこの両者を結びつけている21美の学芸員の方のレポートもあり。でも実際の印象はかなり違ってると書いてあるな..。

というわけで、福田さんの作品もいつか見られたらいいなと思いつつ、今「ひかり埃のきみ」が届くのを楽しみに待ってるところ。
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串の坊さんの器

2016/11/25 Fri 00:11

先日東京出張の折にお客様にご案内していただいた「串の坊 伊勢丹会館店」
こちらのお店で使われていた民芸調の器が、かねてより敬愛している河井寛次郎の作品を彷彿とさせる、なかなか素敵な器でした。

串の坊 伊勢丹会館店

串の坊 伊勢丹会館店

後日お店のウェブサイトから問い合わせたところ、これらの器は串の坊さんオリジナルで、兵庫県の「雷窯」で窯元をされている陶芸家の吉川周而さんの手によるものだそうです。
早速吉川さんの作品をWebでいろいろと検索してみたら、これらの器とは全くテイストの違うアーティスティックなオブジェなども製作されていて、非常に幅広い感性でものづくりをされている方のようですね。

串の坊 伊勢丹会館店

串の坊 伊勢丹会館店

いつかどこかのギャラリーかショップで吉川さんの作品に出会えればいいな、と。
串の坊さんの多彩で工夫を凝らした串カツ、オススメの焼酎もとても美味でした!

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鈴木大拙館 再訪

2015/11/21 Sat 18:30

前回迂闊にも休館日に訪れた金沢市の鈴木大拙館、今回はしっかり開館日を確認して再訪。
あいにくの雨、しかも日の短い晩秋の夕方ということでちょっと写真が暗くて荒いです。


鈴木大拙館

内部は撮影禁止でしたが、玄関から展示室への長いアプローチ、
展示空間・学習空間は宗教思想家の記念館にふさわしい思索的な雰囲気です。
学習空間の壁や引き戸には金沢の二俣和紙が貼られ、
床の間のようなスペースには溜の漆塗の床板が置かれていました。


鈴木大拙館

鈴木大拙館

鈴木大拙館
やはりこの建物のキモは、水鏡の庭、
それに面した回廊と思索空間という正方形の部屋になるんでしょうか。
背後の緑も含めた外部への視線誘導と空間構成が見事です。


鈴木大拙館
思索空間から水鏡の庭を望む


展示物では大拙さんの筆になる「色不異空」の書が印象的でした。
「色」と「空」の字は漢字ではなく図形で書かれ、
「色」は□と△を重ねた形、「空」は◯。なるほど。

もうひとつ、「それはそれとして」の書。
大拙さんは悩み事などを相談されると、じっくり話を聞いたあとに
よく「それはそれとして..」と話し始めていたそうです。
何てことのない言葉のようで、これは結構深いような気もする。
問題に正面からぶつかるのもいいけど、それはそれとして、と
ちょっと横に置いて、立ち位置や見る角度、発想を変えてみる。
問題や悩みを消してしまうのではなく、それを抱えながらどう向き合っていくか、
それに対する心持ちや考え方を見直してみる、とか。
私の拙い言葉でこんな事を書くと、そんな単純な話じゃねーだろ、と
怒られそうですが、まあそれはそれとして。

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大瀧神社・岡太神社へ

2015/11/03 Tue 00:11

福井県は越前市の「大瀧神社・岡太神社」(おおたきじんじゃ・おかもとじんじゃ)
しばらく前にこの神社のことをWEBと本で立て続けに目にしたんで、
ん~これは呼ばれてるんかな~?などと勝手に口実をつけ、
先日福井県までちょっと遠出して見に行ってきました。

奥の院には両神社の本殿が並んで建っているそうですが、
この下の宮は両神社の共有となっているため、神社名が併記となっています。
岡太神社は越前和紙のみならず、全国の和紙業の総鎮守なんだそうです。
この社殿は天保14年(1843年)建立、重要文化財に指定されています。

大瀧神社・岡太神社

ご覧の通り屋根がかなり複雑というかやり過ぎ?というか、
破風が4層に重なり合ってにょきにょきと前方にせり出してるように見えます。
構造的には破風が4つではなくて、2つある社殿の手前の屋根が
奥の社殿に食い込んでいる形かと思いますが、いずれにしろ大瀧神社という名のとおり、
屋根がまるで瀧のようにダイナミックに流れ落ちてきているようです。

大瀧神社・岡太神社
真横から見るとこのような構造


大瀧神社・岡太神社

大瀧神社・岡太神社

大瀧神社・岡太神社
彫刻も相当見応えがあります

棟梁は大久保勘左衛門、永平寺の勅使門を作った人。
この力感にあふれ、複雑でありながら見事に形態もまとまった屋根を見てると、
棟梁のドヤ顔が浮かんでくるような気がしますね。顔は知りませんけど。


しばらく眺めていたら、先ほどから怪しかった曇り空からポツポツと雨が落ち出し、
次第に雨足が強くなってきて、しまいにはバケツをひっくり返したみたいな大雨に..。

しかしこれがまた逆に良かったというか、この強烈な屋根が土砂降りの雨に打たれ、
雨水が檜皮葺き?の屋根をじっとりと濡らして更には屋根を伝って瀧のように流れ落ちて、
それがこの力強い建築に更なる力を与えているようでした。

大瀧神社・岡太神社
大瀧神社・岡太神社
大瀧神社・岡太神社

背景の緑も水を得て生気が立ち上ってきたようで、
こんなときに昔の人は神様の存在を身近に感じたんではないだろうか?と。

大瀧神社・岡太神社
天から神が降臨してきそう

というわけで回廊の屋根の下で感心しながらしばらく眺めていたんですが、
この強い雨が一向に弱まる気配なし。
腹も減ったしもうそろそろ帰りたいんだけど、傘は車に置いてきたし、
仕方なく帰りは結構濡れながら駐車場まで走る羽目に。

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